さて世間によく万能薬と銘うった薬があるように、悪書礼賛、良書非難の別をとわず、よろず匿名批評に効く万能批評家退治薬というものがある。それは次の挑戦的宣言である。すなわち
「物陰にひそむ無頼の徒よ。名乗りをあげよ。面(おもて)を示してさしかかる者に、面をつつみ、姿をかえて襲うは君子の仕業にあらず。悪漢、卑劣漢の仕業なればなり。されば無頼の徒よ。名乗りをあげよ。」
とにかくこれは確かな特効薬である。
ショウペンハウエル/19世紀のドイツの哲学者
『読書について 他二篇』(ショウペンハウエル 著 斎藤忍随 訳 岩波文庫)より抜粋
インターネットが発展してから、掲示板(当時の2ちゃんねるなど)やSNS(Xやインスタグラムなど)などで、特定の人物に心ない言葉をかける事案が多くなったぁと感じていた。
しかし、そんなことは19世紀にはとっくにあったのだとこの言葉から感じとることができる。そして、かなり挑発的な文言だ。
とはいえ、こう言われると大半の批評家は黙るしかなくなりそう。
古典の凄さを思い知ったヒトコトだった(ヒトコトというにはちょっと長いが)。